5万円の豪邸やネコ専用ハウス、賃貸物件や談笑スペース、竹やぶの家etc.いわゆる路上生活者の家「ダンボールハウス」を訪問し、それぞれの家を詳細なイラスト入りで紹介した、異色のお宅訪問レポート。元原稿は建築学科に在籍していた著者の卒業論文らしい。とてもユニーク。調査期間は3年というから、ずいぶん加筆されているのかな。レポートにまとめたダンボールハウスはじつに70件。各家主の「こだわり」や「生き抜く知恵」や「撤去されない工夫」も面白いのだけれど、著者がコミュニティに溶けこんでいく過程が描かれているのも興味深い。「お互いの理解を深めるために(じっくりと)1ヶ月くらいはカオダシに努める」とか、さらりと書いてあるけど、息の長い話だなあとつくづく思って感心する。
「必要最低限のモノ」に囲まれた生活とはいっても、ひとつひとつの家にそれぞれの表情があって、何がそのひとにとって必要不可欠なのかというのも、すこしずつ違うのだ・・・という、当たり前のことにあらためて気づかされたりする。家の主の顔が一度も登場しない割には、じつに表情ゆたかな家たちなのです。
とはいえ、この調査が終了した後、愛知万博の開催に先だって、ダンボールハウスはすべて撤去されたのだとか。あとがきにあるように、「本書は、かつて都心の一等地に存在した究極の家のドキュメント」として記録され、記憶されることとなった模様。
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