しかし、私はもう一度だけ、問いたいのだ。あなたが目指している社会、弱い人や危険な人はいっさいおらず、誰もが「私たちの国や国民は優れているのだ」と諸外国に対して毅然と胸を張り、「お先にどうぞ」「負けるが勝ち」などといった腰抜けな態度は改め、簡単に「軍」と名のつく集団を備えて「万が一のときは自分の国は自分で守る」と宣言できる社会になれば、あなたやあなたの大切なひとは本当に幸福になれるのか、と。「きれいごと」は、本当に何の役にも立たないものなのか、と。
「安心」を得るための読書はやめようと常日頃から思っている割には、新刊が出るとつい購入してしまう香山リカさんの本。学生さんと日頃、接していると、言葉にならない澱のようなものもたまってきたりするのだけれど、香山さんの本を読んでいると、「そ!それそれ、そうなんです!」と膝を打ちたくなるような瞬間が多々あって安堵する。こういうところで「共感」などしていてもいいのだろうか、と思うところなきにしもあらず、なのだけれど。

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