わが家の夕めし
残念ながら絶版ですが、この本、すごく好き。作家、俳優、映画監督、料理研究家etc.etc.が「わが家の夕めし」を写真入りで紹介していて、アサヒグラフにかつて連載されていたものらしい。「えっ、こんなひとが?!」と目を見張るようなひとがゴロゴロ登場していて、なおかつ家の中まで公開してしまっているという、なんとも大胆な企画。昭和50年前後の家族の情景というのも、自分の幼い頃と重なって、とても懐かしい。以下、非常に興味深かったひとの食卓の例を・・・

*遠藤周作(メザシをかじっている写真つき)
奥さんが「食べものに金銭を浪費するのは愚劣だと思っているくちなので」と前置きをしたのち、「とはいえ、自分の家の食卓はあまりにも質素すぎるのではないか」と、紙面を借りて、愚痴を少々。かの大文豪が「時々、夢で血のしたたるビフテキを食っている自分の姿を見る」のだそうです。

*谷川徹三(哲学者。谷川俊太郎さんのお父様)
器の趣味の良さがピカイチ。バーナード・リーチの蓋物を普段用で使っていらっしゃることに絶句。

*荒畑寒村(社会運動家)
なかなか美味しそうな食卓なのに、いままで食べたもので何がうまかったかという話になるとやはり「監獄料理」なんだとか。この「監獄料理」の話はとても面白いのですが、いかんせん絶版で入手困難。

*麿赤児(舞踏家・大駱駝館主宰)
写真中央、手づかみでごはんを食べている少年(ほっぺたにはごはんつぶがついている)は、「南朋ちゃん」と書かれていますが、まがうことなき、大森南朋氏そのひとです。ファンなので、ちょっとドキドキ。

*井上ひさし(子供たちがなにやら不機嫌そうな写真とともに)
前歯をのぞくほとんどの歯が虫歯だという井上氏は、「食事に対してまったく無頓着」で、「やわらかいものが食べたい」ということ以外に望むことはないのだとか。だから「家人が世にもまれな料理下手」だったことは幸いなのだが、「ハンバーグと揚げたチーズと生にんじんの絞り汁の献立は、週に何度も繰り返され、子供たちのひんしゅくを買っている」とのこと。なるほど・・・

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