蝶 ヘルマンヘッセ 
蝶を生涯にわたって愛し続けたヘルマン・ヘッセ。蝶とのかかわりを熱っぽく綴る散文作品と、生命の神秘をうたいあげた詩の数々。手彩色の銅版画を多数掲載
挿絵がとてもきれいな本なのですが、何より驚いたのは『クジャクヤママユ』の章。まるで映像が立ちのぼるかのように、すみからすみまで既視感があるので、どうしてだろうと思っていたところ、これは中学校の国語の教科書に載っていた文面なのですね。恐るべし教育効果。

それにしても、いま読むとなかなか読みごたえがある短編。最後に少年は自らの蝶のコレクションを粉々に握りつぶしてしまうのですが、これを期に、彼の少年期が永遠に失われてしまうのだとすると、そのまぎわというのは、さなぎが蝶に変わる瞬間のように、はかなく痛々しく、艶っぽいものなのですね。暴力性とすれすれのところにあるエロティシズム。

しかし、当時の私はどんな読書感想文を書いていたんでしょう。おそらくまた、「クラスでひとりだけズレた意見」路線まっしぐらだったのでしょう。確信あり。きっと先生としては「友だちを裏切るような行為は、けっきょくのところ自分を虫ばみます」とか「嘘を最後まで突き通すことは不可能です」とかいう、率直な意見を期待していらっしゃったのでしょう。・・・そういうの、書いた覚えないなぁ。

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