どこか「ほかのこどもとはちがう」少年チト。「注意力に欠け、理屈を言い、おうような感受性はいいが、質問が多すぎる」まわりの大人たちは顔をしかめて、彼のことをそんなふうに言う。ところがチトには不思議な素質がやどっていて・・・「みどりのゆび」で地面に触れるだけで、あたりを花畑にしてしまう少年が、世界に奇跡をもたらした、あわくせつないファンタジー。いい本だなぁと、読み終わってしみじみ。唐突におとずれる物語の終焉も、奇跡の短さも、なんか説得力があるんだな。だからといって、この本が絵空事だと言っているのではなくて・・・チトが残していった勇気とか夢を、ときどき思い出して空を見上げる日があってもいいと、思ったりするのです。
「みどりのゆび」という言葉が浸透している割には、実際にこの本を読んだことがあるひとは少ないのではないかと思いますが、子どもたちよりも、大人たちにおすすめな本。懐かしい感じがする挿し絵も良。映画『トト・ザ・ヒ−ロ−』や『八日目』のジャコ・ヴァン・ドルマルの描く世界にもどこか似ている。
この物語を読んで、まっ先に思い出したのが、デザイナーの徳田祐司さんが手がけている『retired weapons』というプロジェクト。映像とかデザインっていうのは、やっぱり強い。すごく端的で、なのに限りなく力強い。
http://www.tokudayuji.com/retriedweapons/retiredweapons.html
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