ビトウィン

2005年7月22日 エッセイ
「さいなん、って何?」とサヅキが尋ねた。妻は「災難というのはねえ、うーんとね、お母さんがお父さんに出会ったということが災難。それで騙されて一緒に暮らすことになったお母さんの苦労の毎日が遭難。分かる?」 
十年あまりも新作を発表していない小説家の「私」、家出をしてまで「私」のところに転がりこんできてくれた16歳も年の離れた妻、そして屈託のなさが愛らしい一人娘のサヅキちゃん。そんな3人が繰り広げる、ちょっと可笑しくて、鼻の奥がつんとなる物語(それも実話)。もちろん、いつも家計は火の車。「お金がない」と言ってしまえば身も蓋もないのだけれど、これがどうしてなかなか!楽しそうな日々なのです。やむなく自給自足、やむなく手作り、やむなく川へ魚を釣りに行く(夕飯のおかずになる)と書かれているものの、ここに描かれているのは正真正銘、かけがえのない家族の記録です。

コメント