誰も知らないイタリアの小さなホスピス
2005年7月12日 ノンフィクション自分が他者によって変えられることを潔く受け入れる寛大さや勇気、ときには無防備さといったものがなければ、どんなに可能性を孕む出会いも育たないだろう。また、相手とそのあいだにつもる時間の記憶を愛おしく思うだけの想像力が働かないところに、発見や創造はないはずである。ともあれ、これまでのふしぎな機縁を想うたびに、限られた時間に流れるもうひとつの豊かさに気づかせ、前向きに生きるエネルギーを与えてくれたのがアンナとの出会いであった。最愛の夫をがんで亡くしたアンナ。その失意と絶望が彼女を「がん末期患者の家庭介護のボランティア組織の設立」へと向かわせた。イタリアのトレヴィーソという町にあるホスピス「アドヴァル」を、アンナの友人である著者が紹介するという本。失われゆく日々に寄り添うひとたちの強靱な意志に、たじろぎそうになる。「患者にとって、消滅する自分が、何かをとおして他の人間のなかに生き続けることが、喜びであり救いとなるのです」
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