自衛隊のイラク派兵は、イラクの人たちへの支援ではなくて、世界から孤立しかけたアメリカへの支援です。同盟国であることのアピールをアメリカは望んでいるわけで、要するに赤い羽です。ただし、とてつもない豪華な羽根で、つくるためには募金額の何千倍もの経費がかかる。そんな矛盾に満ちた支援や貢献に、何の正当性があるのかということを、僕らも考えねばならないし、メディアも伝えなければならない。(森達也)
新右翼の考える人、鈴木邦男。無頼派ジャーナリスト、斉藤貴男。吠える?映像作家、森達也-「左翼」とも「右翼」ともレッテルを貼られたくない男たちが、「日本の現実」を言いたい放題喝破する対談集。かなり面白い★★★

相変わらずズバリおっしゃいます、森さん。それにしても、言葉の選び方ひとつひとつが的確。神妙な顔をして読むべき本なのかもしれませんが、ときおり極上のアイロニーが挟まれるので、可笑しいです。

いま、民族主義の牙を知らない人たちが民族主義はすばらしいとか、単純に愛国心はすばらしいとか言ってるが、「おまえら、ほんとうに知っているのか」と薄ら寒くなる。僕は右翼のよさもわかるけど、くだらなさだとか、暴走したときの危険性もわかるから、常にちょっと待てよという感じがある。(鈴木邦男)
これ、個人的な実感としてうなずけるところ多々ありだったりします。安易な愛国心って、やっぱり苦手。「世界を見てみたら、日本人みたいに愛国心のない国民は他にいないということがわかった。だから日本のことをもっと好きになりたい」とか、海外旅行や留学を機にナショナリズム?に目覚めるひとって多いけど、それってあまり得意気に話すことではないような気がします。けっきょく情動的なものだから、先が続かないし、そんなふうに語られる日本っていうのは、自己肯定感の押しつけになりかねない気がするの。

コミュニケーションって相対するひとによって、もっと柔軟に変化していくべきものなのじゃないかなと。そういう意味でも、この鼎談は芯が通っているのに頑なではなくて、さすがという感じ。森さん曰く「僕は左翼でも何でもない。単に違和感を口にしているだけなんだけど。イデオロギーのレベルじゃない。人間としての品性の問題だよね」。まったくもって品性という言葉に、深く共感。

「決して過ちは繰り返しませぬから」と手を合わせながら、結局は同じ道を歩んでいることに気づかないのが、この日本社会です。僕はたまたま世間とは少しだけ違う視点に立つことができたから、この傾斜がよく見える。後で悔いたくないから、ぎりぎりまでは発言し続けるつもりです。でも、時おり思うけど、もしかしたらもう臨海点を過ぎていて、後はもう突き進だけなのかなぁって。(森達也)
ほんと、この本おすすめなのですが、サブタイトルは何とかならなかったのかしら・・・と思うところ、なきにしもあらず。これを持ってレジに並ぶの、ちょっと恥ずかしいです。どんな偏りがあるひとなのかと疑われそうで(笑)

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