スノードーム

2005年5月27日 小説
これはなによりも芸術家と芸術についての物語であり、作品とそれを創造する人間の物語だ。そこには芸術を通してしか世界と関わることができず、人間的な交わりや愛を経験できなかった者の願いが描かれている。・・・人は人を愛するが、それは相手のことを完全に知らないからという場合もある。相手を完全に理解したとき、愛は憎しみに変わりうる。もちろんその逆もありうるのだが。
『チョコレート・アンダーグラウンド』のアレックス・シアラー最新作。かなわぬ恋について、誰もが語るのを拒みたくなるような秘めたる憎しみについて、狂気と紙一重の愛について・・・描かれているじつに濃密な作品。あるいは、ひとは神の視点を持つことで、どこまで残酷になれるのだろうか?という壮大なテーマが底辺に流れる重厚な物語・・・とも言えるだろう。しかし、美しい。異形の芸術家エックマンが踊り子とめぐり会う場面は、息をのむほどに美しい。アルモドバル監督の『トーク・トゥ・ハー』に通じるところあり。★★★★

コメント