この映画には、血と死体と、家族を失って悲嘆にくれるひとたちと、それでも続いていく日常と、そして終わることのない戦争が、あますところなく映し出されている。例えば、3人の子どもたちを失って、行き場のない憎しみをつのらせるアリ・サクバン氏。彼は「もしもアメリカ兵を見かけたら、やつらが崩れ折れるまで撃ちまくってやるんだ」とカメラの前で散弾銃を構える。けれど、実際にアメリカ兵を目の前にした次の瞬間、彼はそっと娘の肩を抱き寄せるのだ。残された、たったひとりの娘を守るために。憎しみの連鎖が果てしなく続く最中にあっても、その愛は憎しみより深い・・・

「本当の戦争」を自分が知らなかったことにいまさらながら気づいて、かなり打ちのめされてしまいました。「どうして日本人はイラクを裏切ったのだ?」「お前たちはアメリカと同じ敵だ」と真っ向から敵意を向けられる理由に、私たちはずいぶん無自覚なのだと、この映画を観ているとつくづく思います。とにかく、ひとりでも多くのひとに観てもらいたい作品です。★★★★

大阪はシネ・ヌーヴォにて、6月4日から公開。
http://terra.zone.ne.jp/cinenouveau/index2.htm
こちらはマイミクさんが企画されてる講演会。
http://www.visual-arts-osaka.ac.jp/news/contents/watai.html

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