ちいさなちいさな王様
2005年5月3日 小説おまえはなんだって、壁の向こう側をわざわざ見ようなどと思うのかね?どうなっているか知りたいのなら、想像してみればいいじゃないか。ゆっくり落ち着いて、目を閉じてだな、その向こうの世界を自分で思い描いてみればいいのだ。おまえだって、子どものころは、それがあたりまえのようにできたのだぞ。両目を開けたままでもな。もう、やりかたを覚えていないのかね?どうして忘れてしまったのかね?ある日、ふらりと僕の部屋にあらわれたのは―僕の人差し指サイズの小さな王様。どうやら彼の世界では僕らとは正反対に、ひとは歳をとると「だんだん小さくなって」ゆくらしい。「いろんなことをひとつひとつ忘れていく」ことも立派な成熟とみなされるらしい・・・気まぐれな王様と僕の珍妙なやりとりには、思わずにんまりとしてしまうのでした。
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