「恋と革命の味」とうたわれる中村屋のインドカリー。そこには過酷な20世紀前半のアジア史と一人のインド人をめぐるささやかなロマンスが隠されていた・・・1915年、日本に亡命したインド独立の闘士R.Bボース。新宿・中村屋に身を隠しアジア主義のオピニオン・リーダーとして、極東の地からインドの独立を画策した彼の苦悩の生涯とは・・・
かなり難しかったので、自分がちゃんと理解しているのか心もとないのだけど、夢中で読みました。中島岳志さんの本は前作の『ヒンドゥー・ナショナリズム』から注目していたのですが、さらに圧巻。「R.Bボースの伝記を書くために、自分はこの世に生を受けた」と本人もおっしゃってますが、その思い入れたるや相当。愛が深くて圧倒されました。文字通り新進気鋭の若手研究者の渾身の力作。★★★★
日本よ!何処へ行かんとするか?―イギリスによるインド支配を打倒すべき」と主張する日本のアジア主義者たちが、一方において中国に対する紛うことなき帝国主義者の顔を有している点を彼は果敢に指摘した。
けれど、このすぐあとでボースは現実主義的なひとつの選択をする。犬養や頭山が唱えた「アジア主義」は無残にも変質し、ボースはインド独立を達成させるために、日本の帝国主義に歩調を合わせていく・・・嗚呼、何という皮肉!と顔をしかめたくなる話が満載ですが、非常に興味深かったです。
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