何をやっても癒されない
2005年2月23日 ノンフィクション
春日さんの本に妙にハマってしまいました。精神科医なのに(笑)、いつでも主語が「私」で、肝が据わっているというか、逃げも隠れもしないひとの気がするのな。それに本人が狂気と紙一重なのを自覚しているから、結構ひどい悪態をついているのに、冷酷な物言いではぜったいにないのだ。例えばこんな感じ。「患者さんたちは、自分と大差などない。ちっぽけな『わだかまり』やいじましい自尊心、余裕を欠くがゆえの被害者意識に囚われているひとたちばかりなのだ」
そして時おり織りまぜられる「たわいもない話」に、とても共感させられる。『天下無敵の記憶術父子』というエッセイなんて特に。「父とキャッチボールをした経験もなく、まことしやかな親子関係を実践するのが気恥ずかしかった」春日少年が、父親から「記憶術」を教えてもらったときの話。
そして時おり織りまぜられる「たわいもない話」に、とても共感させられる。『天下無敵の記憶術父子』というエッセイなんて特に。「父とキャッチボールをした経験もなく、まことしやかな親子関係を実践するのが気恥ずかしかった」春日少年が、父親から「記憶術」を教えてもらったときの話。
結局、わたしが記憶術の達人となることはなかった。あの記憶術は、ちっとも実用にはならなかった。けれども一介の精神科医として働いている現在において、目の前の患者さんの気持ちを理解し、共感しようと努めるとき、父と同じ光景を共有し得たあの体験は、ひとつの自信としてわたしを支えてくれるように思えるのである。
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