読書というのは、「私」を探している本に出会うという経験です。どんなときも、わたしたちにとって、未知の親しい友人である本。―のぞむべきは、本は「私」の友人、というあり方でなく、「私」は本の友人、というあり方です。
この感覚を共有できるひとがいるとすれば、そのひとも相当の本好きだと確信する。『君のいる場所』という絵本のなかには、こんなワンフレーズがある。「よく知っているはずなのに親しみの感じられないこの街で、よく知らないのに親しみを感じる人の影を探してしまう」―「親しみを感じるひとの影を探す」というのは、「まだ見ぬ本をそっと探す」という行為に、とても似ていると思う。

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