少年サムは15才。重度の知的障害を持っているものの、記憶力は誰にも負けない超人級。潜水夫のチチと在日朝鮮人のハハは、サムの教育方針をめぐって意見が食い違い、現在別居中。「チチ」と暮らすサムと「ハハ」と暮らす妹チャルは、いがみあう両親に頭を悩ませている。そんなある日、ひょんなことからサムは、とある事件に巻きこまれてしまう。それは国家を揺るがしかねない重大な汚職事件だった!サムを救おうと、チチとハハ、そして養護学校の先生が身体を張って立ち向かうのだが・・・
知的障害者、在日朝鮮人、警察の汚職、自衛隊etc.etc.タブーなき時代のタブーをこれでもか、これでもかと押しこみ、深刻になりがちなテーマをユーモアで包んだエンターテイメントムービー。とても面白い映画なのに、ギリギリまで宣伝効果がいまひとつだったような感あり。

ちなみにこの作品は、制作時から「ご当地映画」として地元京都ではメディアに何度も取り上げられていた。舞鶴とはいえ、京都で撮影が行われると、なんとなく心がはずむ。何しろ京都は「映画のまち」なのだ。

さて舞台になった「舞鶴」というのは、京都のひとなら誰でも知っていると思うけど、明治の頃から「軍港のまち」として栄えてきた港町。私も仕事で訪ねたことがあるけど、そのときはおりしも「市民のみなさまと海上自衛隊のふれあいイベント(?)」なるものが開催されていた。重苦しい灰色のイージス艦はもちろん、護衛艦がこれほど一堂に会したのを見たことがなかったので(全国から確か31隻!)、こちらは身震いせんばかりだったのだが、市役所のひとなんて「海軍のカレーが美味いんですよ」と舌なめずりをしていた。この異様さに気づかなくなるなんて・・・ぜったいおかしい。いまでも10人に1人が海上自衛隊およびその関係者―だからなのか、奇妙なくらいに海軍と地元住民が共生して暮らしている。「自衛隊なくしては、まちは成り立たない」と多くの住民が内心思っているあたりが、沖縄と同様に「悲しいジレンマ」を感じてしまう。

と、そんな舞鶴で撮影された『ニワトリはハダシだ』は、オープニングでイージス艦がどっかーんと現れ、さらには若い警官が「警察は国家の犬か?!」とお上に楯突く―なんともスカッといさぎよい?映画です。このような映画が未来永劫つぶされないような「自由の国ジャポン」であってほしいと、切に願うばかりでございます。

ちなみに、タイトルの由来はチチがハハにプロポーズをしたときの言葉。
「ナニジンでもかまへん、ニワトリはハダシや!」から。

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