豚を盗む

2005年2月12日 エッセイ
『ありのすさび』『象を洗う』につづく待望の3作目。いつのまにか佐藤さん、独身のまま50代に突入されるみたいです。前作より頑強さが増して、哀愁がただようようになったのは・・・気のせいだと思いたい。例えば友人夫婦の家に招かれたときの話。雛人形の飾られた部屋で”早春を思わせる料理の数々”でもてなされた際に、「僕は正座したまま感動して、しばらく箸もつけられなかった」ちょっと切ない話じゃないの、と思った矢先に相変わらずな日常にため息ひとつ。一日の食事は「ジュース・ヨーグルト・珈琲・クッキー・モスバーガー」他人事ながら「大丈夫ですかぁ〜佐藤さ〜ん」と肩を揺すりたくなってしまう。

さて不思議なタイトルの意味は如何に?と気になるところ。
身のまわりのひとたちを題材に佐藤さんが文章を書くと、いつもこんなふうに釘をさされるそうです。「また無断で私の豚、盗んだでしょ」タイトルの『豚を盗む』は「豚を盗んで骨をほどこす」ということわざからつけられているそう。「大きな悪事をはたらいたあとで、小さな罪滅ぼしをする」という意味なんだとか。小説家って因果な商売なんですね。

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